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皆さん、おはようございます。
京都市四条新京極入り口の阪本漢方堂です。
今月(2020年10月)からビールの酒税が下がりました。
ビールの原料と云えば大麦、そして麦芽。
今朝は「大麦&麦芽と漢方」について取り上げてみましょう。
コロナ禍の前は、県外からビール好きの友人が入洛した際にクラフトビールを飲みに出かけていました。京都市内にも美味しいビールを出してくれるお店が増えました。
個人的にはヴァイツェンやホワイトビールが好みです。
ホワイトビールには小麦も使用されますが、ビールの基本原料は大麦です。
ちなみに大麦も大きく分けて、粘り気が少なく、ローラーで押しつぶして押し麦にして用いる「うるち麦」と、モッチリした粘り気が有る「もち麦」があります。
基本的な作り方は大麦を発芽させて麦芽にし、ビール酵母の働きによってアルコール発酵させます。
そのまま大麦とビール酵母を単に混ぜ合わせてもダメなのです。
大麦を発芽させて、麦芽にして用いるのがポイントで、この麦芽が漢方の世界でも、実は活躍しているのです。
大麦を発芽させることで、大麦に含まれるでんぷんを糖にまで分解する酵素(*1)、同じく大麦に含まれるたんぱく質をアミノ酸にまで分解する酵素(*2)が、発芽させることで酵素の活性がおこり、よく働いてくれます。
多糖類であるでんぷんは、そのままでは大き過ぎ、アルコール発酵しやすい麦芽糖に分解する必要が有るのです。この作業を糖化と云います。
単糖であるブドウ糖が2個くっ付いたのが麦芽糖で、二糖類の仲間です。
さて大麦を発芽させた後、乾燥し焙煎するのですが、焙煎する方法や加熱温度(高音なのか低温)の違いによって、麦芽の種類が違ってくるのです。
例えば「カラメル麦芽」「クリスタル麦芽」「チョコレート麦芽」「黒麦芽」などの種類があります。
このような名前は漢方では云いませんが、漢方の世界でも麦芽を弱火で炒ったものを、煎じて用いるのです。(*3)
母乳を止める時、すなわち断乳する時や胸が張って困る時に用います。
では、更に麦芽を用いた漢方薬:半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)をご紹介しましょう。
メニエール症候群など虚弱体質者にみられる眩暈(めまい)や頭痛に用いる漢方薬です。
内容をみてみますと、ウコギ科の薬用人参をはじめ、生姜、ミカンの皮(陳皮:チンピ)、同じくミカン科のキハダ(黄柏:オウバク)、サルノコシカケ科の茯苓、マメ科の黄耆(オウギ)、サトイモ科の半夏、キク科の白朮(ビャクジュツ)など12種類以上の生薬が配合されています。
つまりこの半夏白朮天麻湯は、身体を温め、胃腸の弱い方には、消化吸収の働きを良くしてくれ、頭が痛い、頭が重い、めまい、立ち眩みを改善する生薬の組み合わせになっています。
麦芽の胃腸を整え消化吸収機能を高める働きにプラスして、元気の素を補う生薬の組み合わせ薬用人参とマメ科の黄耆、キク科の白朮の組み合わせが、この処方のポイントです。
ビールやウィスキーの原料として使用される麦芽は、漢方の世界でも活躍してくれています。今宵、ビールを飲まれる際に今日の話を思い出してくださいね。
最後に阪本漢方堂では、この1週間「めまい、頭痛の相談ウィーク」としてご相談を受け付けています。皆さんの周りに、回転性の眩暈(めまい)、フラーっとするめまい、床や地面に足がついていないようなフワフワ感の伴う眩暈(めまい)の方、頭が痛むなど、頭がすっきりしない方がいらっしゃいましたら、是非阪本漢方堂を教えてあげて下さいね。
相談の出来る薬局 阪本漢方堂
*1 アミラーゼ
*2 プロテアーゼ
*3 炒麦芽