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皆さん、おはようございます。
京都市新京極入り口の阪本漢方堂です。
今日は「化石由来の漢方薬」の話です。
奈良国立博物館で、今月9日まで第72回正倉院展が開催されていました。皆さん見に行かれましたか?
今回漢方生薬8種類が出展されており、その8種類の中からナウマンゾウとは異なる種の象、ナルバタゾウとみられる上顎の歯の化石「五色龍歯(ごしきりゅうし)」がありました。会場で見られなくても、新聞によく画像が掲載されていたので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか?
博物館で実際見てみますと、重量感がある長さ16.7cm、幅8.9cm高さ24cmの大きさの塊です。当時の人々は象と云う動物を見たこともないでしょうから、この化石を目の前にどのような会話がなされていたのか想像するとワクワクすることが出来ました。
ちなみに使用された形跡はないとのことです。
今回も「くすり」として展示されていますように、漢方薬の原料生薬は植物由来だけでなく鉱物・化石由来もあります。
大型哺乳動物の歯の化石を龍歯(りゅし)と呼ぶのですが、マンモス、象、サイ、鹿などの大型哺乳動物の骨の化石は現在でも流通しており使用します。
化石を使用するなんて、すごいと思いませんか?日本でも江戸時代に瀬戸内海沿岸や海底から産出していたと云われています。(*1)
生薬名をドラゴン、竜の骨と書いて、竜骨(りゅうこつ)と云います。
今回の正倉院展には出展されていませんが、「竜骨」「白竜骨」と呼ばれる鹿の骨や歯、角の化石が献納されています。
さて竜骨は漢方の世界でどのように用い、役立っているのでしょうか?
それは眩暈(めまい)や不安神経症、寝汗や下痢などに用います。
単独で用いるより、相性の良い生薬と組み合わせます。
では骨の化石、竜骨を配合した漢方薬、桂枝加竜骨牡蛎湯を紹介しましょう。
桂枝は薬用のシナモンのことで、生姜やナツメの実、ボタン科の芍薬、マメ科の甘草、
オイスター牡蠣の貝殻である牡蠣(ぼれい)と本日ご紹介の竜骨を入れた7種類を組み合わせた漢方薬がこの桂枝加竜骨牡蛎湯です。
体力や精力を消耗してしまい疲れやすく、眠れない人や、ドキドキと動悸をお腹で感じる人、髪の毛が抜けたり、フケが出たり、精神不安や神経症になった人が使用の目標になります。
もう一つ似た名前の漢方薬、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)が有ります。不眠、高血圧などの不安やイライラと興奮、焦燥感のみられる場合に用います。
漢方の世界は面白いもので、大型動物の骨の化石や、牡蠣(オイスター)の貝殻がこのように役立つのです。
皆さんの周りに、寝つきの悪い方、途中で目が醒める方、寝たぞ!と云う熟眠感がない方、漠然とした不安感の有る方がいらっしゃいましたら、是非阪本漢方堂を教えてあげて下さいね。
相談の出来る薬局 阪本漢方堂
*1 「漢方のくすりの事典」医歯薬出版株式会社